
高血圧だと薄毛になる?AGA治療の注意点と安全な対策を医師が解説【医師監修】
本記事はAGA治療の専門医院として20年以上の実績がある、リブラクリニックが制作したものです。
高血圧の管理と、鏡を見るたびに気になる薄毛。この二つの悩みを同時に抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると、高血圧がAGA(男性型脱毛症)の直接的な原因になることはありません。しかし、高血圧の方が薄毛治療を行う場合、治療薬の選択には専門的な知識と細心の注意が必要です。
この記事では、医療従事者の立場から高血圧と薄毛の関係性、治療に伴うリスク、そして安全で効果的な対策について、科学的根拠に基づいて詳しく解説します。
この記事の監修者
座右の名は「努力こそ金なり」、趣味は釣り。
高血圧と薄毛の気になる関係性|直接的な原因ではないが注意が必要
「高血圧だから薄毛が進行するのではないか」という不安を抱く方は少なくありません。しかし、医学的に見ると、高血圧がAGA(男性型脱毛症)を直接引き起こすというエビデンスは確立されていません。
AGAの主な原因は、遺伝的素因と男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)の影響です。
ただし、直接的な原因ではないものの、高血圧と薄毛には無視できない間接的な関連性があります。
血行不良は頭皮環境への悪影響となり得る
髪の毛を育む毛母細胞は、毛細血管から送られる酸素や栄養素をエネルギー源として、活発に細胞分裂を繰り返しています。
しかし、長期間にわたる高血圧は血管に持続的な圧力をかけ、動脈硬化を促進させる可能性があります。
動脈硬化が進行すると血管のしなやかさが失われ、特に頭皮のような末梢部分の微細な血管では血流が滞りがちになります。
この血行不良により、毛母細胞へ十分な栄養が供給されにくくなることが考えられます。その結果、髪の毛の成長サイクルが乱れたり、一本一本の髪が細くなったりする可能性があります。
つまり、高血圧が直接AGAを引き起こすわけではありませんが、頭皮という「土壌」の状態を悪化させることで、既存の薄毛の進行を助長する一因となり得るのです。
生活習慣の乱れは、高血圧と薄毛の共通のリスク要因となる
高血圧と薄毛には、共通する生活習慣上のリスクとなる要因が複数存在します。これらが複合的に絡み合うことで、両方の問題が同時に現れることがあります。
主な共通したリスク要因
- 喫煙: ニコチンは血管を収縮させ、血流を悪化させます。
- 過度の飲酒: アルコールは血圧を上昇させる要因の一つです。
- 精神的ストレス: ストレスは自律神経のバランスを乱し、血管収縮やホルモンバランスの乱れを引き起こします。
- 食生活の乱れ: 塩分や脂肪分の多い食事は高血圧のリスクを高め、髪の成長に必要な栄養素の不足にもつながります。
- 睡眠不足・肥満: これらはホルモンバランスや血圧に悪影響を及ぼします。
これらの生活習慣は、それぞれが独立して高血圧と頭皮環境の両方に悪影響を与えるため、「高血圧と薄毛が併発している」という状況を生み出しやすくなります。
生活習慣の改善は、AGAを直接治すものではありませんが、血圧を安定させ、頭皮環境を健やかに保ち、薬物治療の効果を最大限に引き出すための重要な基盤となります。
臨床研究でも関連性が示唆されている
近年の研究では、AGAの進行度と血圧、血糖値、肥満などの生活習慣病関連の指標との間に統計的な関連性があることが報告されています。
これは、高血圧という病態そのものが、AGAの進行に何らかの形で間接的に関与している可能性を示唆するものです。
【要注意】高血圧の方がAGA治療薬ミノキシジルで薄毛対策するリスク
AGA治療を考えた際、多くの方が「ミノキシジル」という成分名を耳にするでしょう。しかし、高血圧の方がこのミノキシジルを使用する際には、重大なリスクを理解する必要があります。
ミノキシジルは、もともと1970年代に重度の高血圧を治療するための降圧剤(血圧を下げる薬)として開発されました。
その臨床試験の過程で、副作用として「多毛」が偶然発見され、後に発毛剤の有効成分として転用されることになったのです。この歴史こそが、リスクの根源を物語っています。
ミノキシジルの本質的な作用は、血管を拡張させて血圧を下げることです。そのため、すでに降圧剤を服用している高血圧の方がミノキシジルを併用すると、二つの薬の作用が重なり合い、血圧が過度に低下する「相加効果」が生じる危険性があります。
急激な血圧低下で起こり得る症状
- 強いめまい、ふらつき、立ちくらみ
- 動悸、息切れ、不整脈
- 失神
- 心臓への過度な負担
国内未承認の内服薬と承認済みの外用薬:リスクの大きな違いがある
AGA治療で用いられるミノキシジルには、内服薬と外用薬の2種類があり、高血圧の方にとってのリスクレベルは全く異なります。
- 内服薬(ミノキシジルタブレット): 服用すると成分が血流に乗って全身に行き渡るため、血圧への影響が強く現れます。
重要なのは、日本ではAGA治療薬として承認されていないということです。降圧剤を服用中の方が自己判断で内服することは、命に関わる事態を招きかねません。個人輸入などによる安易な使用は絶対に避けるべきです。 - 外用薬(塗り薬): 日本でAGA治療薬として承認されているのは、この外用薬タイプです。頭皮に直接塗布するため、成分の多くは局所的に作用します。血中に吸収される量は内服薬に比べてごくわずかであり、全身の血圧への影響は格段に低いとされています。
ただし、リスクがゼロというわけではありません。製品の添付文書にも、高血圧や低血圧の方は使用前に医師への相談を義務付けています。
高血圧の方が外用薬の使用を検討する際は、必ず治療開始前に専門医による診察が必要です。医師は、患者が服用中の降圧剤の種類、現在の血圧コントロール状況、心臓など循環器系の全体的な健康状態を総合的に評価した上で、使用の可否を判断します。
特徴 | ミノキシジル内服薬(タブレット) | ミノキシジル外用薬(塗り薬) |
---|---|---|
国内承認 | 未承認 | 承認済み |
作用範囲 | 全身に作用 | 主に頭皮に局所的に作用 |
血圧への影響 | 高い。 降圧剤との併用で急激な血圧低下のリスク大 | 低い。 ただし、ゼロではなく、医師への相談は必須 |
主なリスク | 急性低血圧、動悸、めまい、心臓への負担 | 頭皮のかゆみ、かぶれ。全身性の副作用は稀だが可能性あり |
推奨 | 国内未承認のため、個人輸入などによる自己判断での使用は極めて危険であり、絶対に服用するべきではありません。 | 国内承認薬。 ただし、必ず使用前に医師に相談。 |
ミノキシジルによる血圧低下は単なる「副作用」ではなく、その薬が持つ本来の「主作用」です。
発毛効果を期待して国内未承認のミノキシジル内服薬を使用するということは、意図的に自身の循環器系に作用する物質を管理外の状況で体内に取り入れることに他なりません。
高血圧の方のAGA治療:安全な第一選択肢はフィナステリド・デュタステリド
高血圧の方でも、日本国内で承認された医薬品を正しく用いることで、安全かつ効果的に薄毛治療を進めることは可能です。重要なのは、正しい知識を持ち、専門家の指導のもとで適切な方法を選ぶことです。
高血圧の方にとって、AGA治療の第一選択となりうるのが「プロペシア(フィナステリド錠)」や「ザガーロ(デュタステリド錠)」です。これらは日本国内で承認されているAGA治療の内服薬です。
これらの薬は、AGAの根本原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制することで、抜け毛を防ぎ、ヘアサイクルの正常化を促します。その作用機序はホルモン系に働きかけるものであり、ミノキシジルのように血管や血圧に直接作用するものではありません。
ジヒドロテストステロン(DHT)について詳しくは下記記事もご参考ください。
ジヒドロテストステロン(DHT)とは?AGA・性機能への影響と対策を専門家が解説【医師監修】 – AGA治療のリブラクリニック
そのため、一般的に高血圧の方が服用しても安全性が高く、降圧剤との併用も問題ないとされています。
ただし、医薬品である以上、副作用のリスクが皆無なわけではありません。ごく稀に軽微な血圧変動が報告される可能性も指摘されており、どのような薬であっても治療開始にあたっては医師の診断が不可欠です。
フィナステリドが安全か、承認薬であるミノキシジル外用薬が使えるか、あるいはどのような生活改善が最も効果的かは、ご自身の血圧の状態や服用中の薬の種類によって全く異なります。
特に国内未承認の医薬品の個人輸入などは、予期せぬ健康被害を招くため絶対に避けるべきです。
このような複雑な状況だからこそ、専門家による診断が不可欠です。リブラクリニックのオンライン診療では、ご自宅から専門医に直接相談し、あなたの健康状態に最適化された国内承認薬による安全な治療計画を立てることができます。
まずは専門医に相談することから、安全な一歩を踏み出しましょう。
もしかして降圧剤の副作用?薬による薄毛(薬剤性脱毛症)の可能性
薄毛の原因を探る中で、「今飲んでいる降圧剤そのものが原因ではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
一部の情報では「降圧剤で髪は抜けない」と断言されていますが、これは単純化されすぎています。実際には、特定の種類の降圧剤が、一部の方に脱毛を引き起こす「薬剤性脱毛症」の原因となる可能性は医学的に知られています。
これはAGAとは全く異なるメカニズムで起こる脱毛症です。多くは「休止期脱毛」と呼ばれるタイプで、薬の影響により多くの毛髪が成長期から休止期へと一斉に移行し、薬の服用開始から2~4ヶ月後に抜け毛が増加するという特徴があります。
脱毛の副作用が報告されている主な降圧剤
- β遮断薬: 古くから使用されている降圧剤で、末梢の血流を低下させる作用があるため、頭皮への血流に影響し脱毛の一因となる可能性が指摘されています
- ACE阻害薬: 薬剤性脱毛症の原因として報告がある薬剤クラスです
- カルシウム拮抗薬: 特にアムロジピン(製品名:アムロジン、ノルバスクなど)は、添付文書にも副作用として脱毛が記載されており、実際に脱毛が報告されたケースもあります
最も重要な注意点として、絶対に自己判断で降圧剤の服用を中止しないでください。血圧のコントロールを怠ることは、心筋梗塞や脳卒中といった生命に関わる病気のリスクを著しく高めます。
もし、降圧剤を飲み始めてから抜け毛が増えたと感じる場合は、必ずその薬を処方した医師(かかりつけの内科医や循環器内科医)に相談してください。
医師が薬剤性脱毛症の可能性が高いと判断した場合、脱毛の副作用が少ない別の種類の降圧剤に変更することを検討できます。多くの場合、原因となっている薬を中止または変更すれば、脱毛は回復に向かいます。
高血圧と薄毛に関するよくある質問と回答
高血圧と薄毛治療に関する、特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1: 降圧剤を飲んでいますが、プロペシア(フィナステリド)は使えますか?
A: 一般的には使用可能です。フィナステリドの作用機序はホルモンに対するもので、多くの降圧剤と直接競合することはありません。
ただし、あらゆる薬には相互作用の可能性があるため、AGA治療薬を処方してもらう際には、必ず医師に服用中の降圧剤の種類を含め、すべての薬を正確に伝えてください。
Q2: 海外からミノキシジルタブレットを個人輸入して飲むのは安全ですか?
A: 絶対にやめてください。極めて危険な行為です。
ミノキシジル内服薬(タブレット)は、日本ではAGA治療薬として承認されていません。個人輸入品は有効成分の含有量や品質が保証されておらず、不純物が混入している可能性もあります。
医師の監督なしに降圧剤と併用した場合、深刻な健康被害や生命の危機につながる恐れがあります。医薬品は必ず国内の医療機関で診察を受け、承認されたものを処方してもらってください。
Q3: 降圧剤を飲み始めてから髪が薄くなった気がします。どうすればいいですか?
A: まず、ご自身の判断で薬の服用を中止しないでください。速やかに、その降圧剤を処方した医師に相談してください。
薬剤性脱毛症の可能性が考えられる場合、医師の判断で副作用の少ない別の薬に変更することが可能です。
Q4: この悩みは、かかりつけの内科医とAGA専門クリニック、どちらに相談すべきですか?
A: 両方の専門家と連携することが理想的です。
まず、高血圧のような持病を持つ患者の治療経験が豊富なAGA専門クリニックで相談を始めるのが良いでしょう。そこで薄毛の状態を正確に診断し、安全な治療計画の提案を受けます。
その上で、提案された治療計画をかかりつけの内科医や循環器内科医に共有し、全身の健康管理の観点からも問題がないかを確認してもらうのが最も安全な進め方です。
リブラクリニックのようなオンライン診療は、この最初の専門的な相談を行う上で非常に便利な選択肢となります。
まとめ:高血圧の方の薄毛治療は自己判断せず、まず専門医にご相談ください
この記事では、高血圧と薄毛に関する様々な疑問や不安について、医学的見地から解説しました。
高血圧はAGAの直接的な原因ではありませんが、頭皮の血行不良を介して間接的に薄毛の進行に影響を与える可能性があります。
降圧剤を服用中の方が国内未承認のミノキシジル内服薬を個人輸入などで使用することは、急激な血圧低下を招くため極めて危険です。
国内で承認されているフィナステリドやデュタステリドは、血圧への直接的な影響が少なく、高血圧の方にとってより安全なAGA治療の第一選択肢となり得ます。
安易な自己判断や、安全性が保証されていない国内未承認薬の個人輸入は絶対に避けてください。
あなたの髪と健康を守るための最も確実な方法は、専門家と相談することです。リブラクリニックのオンライン診療などを活用し、安全で効果的な治療への第一歩を踏み出してください。
当院で取扱の薬品
当院では、国内正規品のプロペシアとフィナステリド錠(プロペシアジェネリック)、ザガーロとデュタステリド錠/カプセル(ザガーロジェネリック)、ミノキシジル配合外用液5%、カルプロニウム塩化物外用液5%を処方しております。処方や服用方法に関して詳しくは下記ページをご覧ください。
- プロペシア(フィナステリド)とは?効果・副作用・費用から注意点まで専門医が徹底解説【医師監修】
- 当院で取扱のプロペシアジェネリック(フィナステリド錠)(東和薬品株式会社/富士化学工業株式会社/ヴィアトリス製薬合同会社)
- ザガーロ(デュタステリド)の効果や副作用、服用方法と注意点を解説【医師監修】
- 当院で取扱のザガーロジェネリック(デュタステリド錠/カプセル)(東和薬品株式会社/Me ファルマ株式会社)
- ミノキシジルの効果と副作用、内服薬と外用薬の違いについて解説【医師監修】
- 【医師監修】カルプロニウム塩化物の処方と服用方法 –AGA治療のリブラクリニック
当院では電話での問診にてオンライン診療を実施しております。来院不要でかかる費用はお薬代のみですので、お気軽にご相談ください。